ZEN-NOH Recruiting

グループ外にもたくさんの仲間をつくり、
課題や困難に立ち向かってほしい
いつの時代も「変革の時代」と言われてきましたが、現在は本当の転換期ではないか、と野口代表理事理事長は語ります。コロナ禍をきっかけにして、持続可能な社会のあり方について多くの人が思いを巡らせるようになったことで、今、農業の多面的機能が見直され、JA全農に寄せられる期待が高まっています。

JA全農が向き合う
多種多様な課題

JA全農は今、どのような課題と向き合っているのでしょうか?

キーワード化すると、生産、消費、流通、SDGs、そしてJA。以上5つの場面で多種多様な課題と向き合っています。まず〈生産〉に関して言えば、もう積年の課題でもありますが、高齢化と人口減少を背景とした農業の担い手不足、それにともなう耕作放棄地の増大は深刻です。いかにして生産基盤を維持していくか。これはJA全農にとっても最重要課題です。〈消費〉に関して言えば、内閣府が発表している人口動態の推移を見ると、20年後には0〜14歳の人口が300万人減る、15〜64歳の人口が1400万人減るとあります。つまり、1700万人分の食の需要がなくなるなかで、日本の農業はどのように対応していくべきか、行動に移す時期が来ています。また、人口が減少局面にある一方で、少数世帯が増加しています。これは女性の社会進出が大きく関係していますが、これにより〈流通〉に対する新たなニーズが日増しに高まっています。簡便、即食、小分け、冷凍食品、惣菜、eコマースを含めた「宅食」といった需要が伸び、消費のスタイルが大きく変わり始めています。

さらにコロナ禍によって、生活のスタイルまでもが変わり始めています。

そのとおりです。テレワークや時差出勤、サテライトオフィスでの勤務などが浸透し、郊外や地方への移住、あるいは二地域居住といった動きも生まれています。自宅で過ごす時間が増えるなど、現代人のライフスタイルが変わり始めているなかで、食に対するニーズもさらに多様化していくことが見込まれます。こうした変化のなかで、どのような食品やブランドを開発し、これからの時代に適った価値を提供していくか。これも重要なテーマです。また、今回のコロナ禍は、図らずも多くの人が日々の暮らしや社会のあり方について思いを巡らす契機となりましたが、持続可能な社会をどのように実現していくべきか。〈SDGs〉の達成に向けて、農業が果たせる役割は極めて大きいと私たちは考えています。食料の安定確保をはじめ、治山治水、再生可能エネルギー、循環型社会、海洋資源の保全、陸上生態系の保護など、私たちは極論すればSDGsの17の目標ほぼすべてにコミットすることができます。それだけに自分たちの提供価値を最大化させるにはどうすればよいか。〈JA〉の名のもとに集結する各組織に寄せられる期待も高まっているだけに、JA全農も経済事業というJAグループ内での機能分担にとらわれずに、高い視座、広い視野のもとで事業開発を進めていくことが求められています。

次の50年に向けた
5つの最重点事業施策

一連の課題を踏まえ、どのような取り組みを進めていますか?

JA全農は創立50周年を迎え、次の50年に向けた第一歩を踏み出しました。まずは2030年を一つの区切りとして、目指す姿を描くなかで次の5つの最重点事業施策を掲げています。

1つ目は「生産振興」です。生産基盤の確立に向けて、担い手不足を補うための労働力支援、新規就農者支援、生産性向上に向けたスマート農業の確立、低コスト資材の普及などに取り組んでいます。労働力支援については、大手旅行会社と農作業受委託契約を結び、全国レベルでの労働力の確保と供給に取り組んでいます。スマート農業については、「ゆめファーム全農」においてICT、IoT、環境配慮型技術、生分解性プラスチック、IPM(総合的病害虫管理)といった最先端技術を導入した多様な取り組みを進めています。

2つ目は「食農バリューチェーンの構築」です。消費と生産の現場を強固につなぐことを目指し、地域横断的な商品開発を進めています。製粉メーカーグループとの小麦の新品種の栽培研究や、国立研究開発法人との実需者ニーズに合った小麦の新品種の開発研究など、私たちの商品開発は種から着手しています。そして、青果物卸売会社とは市場流通の合理化に向けて連携を図っていますし、別の青果物卸売会社とは青果の低温物流に向けた取り組みを進めています。さらに飲料メーカーとは果実系飲料を産地ごとに開発できないか検討を重ねています。このように私たちの商品開発というのは、生産の現場から消費の現場にいたるまでのすべてのプロセスにおいて、それを進めています。

3つ目は「グローバル戦略・海外戦略」です。これからの10年で国内需要がさらに縮小していくことが見込まれるなかで、日本の農畜産物の生産基盤を守るためには海外に供給先を求める必要があります。たとえばJA全農は2017年、ロサンゼルスに和牛の加工や販売を実施するP&Z FINE FOODSという関連会社を設立しました。コロナ禍のために米国の外食需要は激減したものの、eコマース向けの需要が大きく伸長し、JA全農からの和牛の米国向け輸出量は前年実績を大幅に上回りました。これは、従来米国では、牛肉は主に大サイズのブロックやステーキ肉として流通していたものを、薄切り肉に加工し、小サイズで包装・流通させることで、家庭でも手軽に和牛を楽しみたいという個人の需要に応えた結果と言えますが、海外においても消費者ニーズに対応していくことが大切です。輸出先として重要なアジア圏では、本会も出資している大手飲食チェーン店が海外店舗を展開し、JA全農からも日本産米をお届けしていますが、JA全農は米と一緒に炊飯技術を輸出しています。また、同じくアジア圏で海外店舗を展開する大手小売会社とも、北と南とでは収穫時期が異なる日本の特性を生かしたリレー出荷を通じ、絶えず商品が棚に並ぶようにする取り組みを行っており、高級食材である日本産の果物を求める現地の方から人気を得ています。

4つ目は「地域の活性化と地域の暮らし支援」です。都心部で暮らしていると認識されにくいのですが、JAが展開する事業、JAグループが提供するサービスの中には人口減少が進む地域においては不可欠な生活インフラそのものというべきものも多く含まれます。地域の暮らしを守るための、ガソリンスタンドや小売店などの生活インフラ整備や地域循環を基本とした地産地消、再生可能エネルギーの普及などです。たとえば、ファーマーズマーケットの拡充は地域住民の暮らしを守る一方、地域への来訪者の増加にもつながっていますが、こうした地域の暮らし支援を、同時に地域の活性化へと結びつけていく取り組みを進めています。

5つ目は「環境問題や社会課題への対応」です。JA全農では、環境保全型農業の拡充と、農畜産物の加工・流通・販売における環境負荷低減に取り組んでいますが、これも先ほどお話ししたことと同じで、単なる環境問題への取り組みとして終始させるのではなく、その取り組みを通じて他の社会課題の解決を同時に図っていくような発想を意識しています。たとえば、農村部は太陽光、風力、バイオマスといった再生可能エネルギーに関する資源が豊富であることを、環境対策だけで終わらせず地域の活性化へと活かしていけないか。そんなことを考えながら、取り組んでいます。

JA全農、
そしてJAグループに寄せられる期待

ここまでのお話を聞いていても、時代や社会が大きく変わろうとしているのを感じます。

いつの時代も「変革の時代」と言われてきましたが、現在は本当の転換期ではないかと私自身、強く感じているところでもあります。日本経済は成長期を過ぎ、成熟期に入った。人口も減少局面にある。加えて、経済格差が広がり、自然災害も増え、現代人の価値観が揺らぎ始めたところに、パンデミックが追い打ちをかけた。多くの人が抱える不安や不満が、さまざまな課題を一気に顕在化させ、「このままではいけない」という気運へとつながった——。私は、そんなふうにとらえています。資本主義経済のもと営利の追求を目的とする企業までもが、ESG、サステナビリティ経営に本腰を入れて取り組みはじめていることからも、時代が変わろうとしているのを見て取ることができます。先ほどご紹介した数々の事例からもお気づきかもしれませんが、私たちはこれまで多くの企業との提携を進めてきました。自分たちの使命を全うするためには、各社の助力が必要だったからです。しかし、今は状況が一変し、ありがたいことに各企業から提携のお話をいただけるようになっています。企業にとっても、自社の持続可能性、事業の持続可能性を考えたとき、やはり行き着く先のひとつは農業であり、第一次産業なのだということだと思います。

JA全農、そしてJAグループに寄せられる期待が高まっているとは、そういうことなんですね。

飽食の時代を生きる日本人にとって、そこに食べ物があるのは当たり前ですが、日本の人口が減る一方で世界の人口は増えています。このままでは世界の食料需給がひっ迫することが想定されるなかで、国内の生産基盤が縮小しているという矛盾、多くを海外からの輸入に頼っているという矛盾、フードロスという問題を抱えているという矛盾に、多くの人が目を向けてくれるようになったことは、私たちにとって追い風です。また、環境問題への意識の高まりを受け、防災、減災、国土保全といった、農業の多面的機能が再注目されていることもまた、私たちにとって追い風です。しかも、こうした大局的な見地から農業が見直されるようになった結果、地域ごとの多彩な食文化や、祭に代表されるような豊かな伝統文化も着目されています。また四季、二十四節気、七十二候という季節を表す言葉は、すべて美しい日本の自然や農業に由来するもので、それが日本人のアイデンティティーの原点であることを、多くの人たちが共有してくれるようになることを願っています。農畜産業を営む生産者を支え、組合員たちが暮らす地域を支えることで、食料を安定的に供給し、この国のアイデンティティーを未来につなげていくこと——。これを最大の使命として掲げ、創立以来半世紀、時代や社会が変わろうとも一貫してその任に当たってきたJA全農にとって、これほどの追い風に乗れることはないと実感しています。

職員一人ひとりが果たすべき
真の役割

そうした追い風のなかで、これから入会する人たちに期待することとは何ですか?

2つのことを期待しています。
かつて経験したこともない環境変化のなかで、JA全農グループに対する期待が高まってはいるものの、では何が正解なのか、正しい方針や正しい事業のやり方というのは、残念ながら誰にもわかりません。だからこそ若い人たちに期待したいのは、課題や困難に対して躊躇なく立ち向かっていく姿勢です。過去から現在に至る延長線上の中だけで将来を考える、そんな時代ではもうなくなりました。来年来るであろうと思っていた変化が今年来る、今年来るだろうと思っていた変化が今月来る、というように、コロナ禍以降、時間軸が二乗にも三乗にも縮まっているのが現代という時代です。前例を踏襲していれば大過なく事業が進んでいく時代ではないからこそ、若い人たちには立ち止まることなく新しいことに挑戦してほしいと思っています。私が部長職時代、部下によく言っていたのは「上司の言うことは本当に正しいの?」「去年と同じ仕事はするなよ」の2点でしたが、それを実践した部下たちは、しっかりと自分の考えを持ったうえで上司に具申し、新しい取り組みを自ら主導し、事業化させていきました。「自分にしかできない仕事」というのはそうやって生み出すものだと考えていますが、とにかく若い人たちには立ち止まることなく前進し新しいことに挑戦し続けることを期待しています。

課題や困難に対して立ち向かい、前進していく姿勢が大切ということですね。2つ目はいかがでしょうか。

2つ目は、グループ外にたくさんの仲間をつくっていってほしいと願っています。
誤解を恐れずに言えば、私たちJA全農、そしてJAグループは今、時代の先頭を走っているとも言えます。農業がこれまでになく注目されるなかで、もしかしたら私たちは農業を起点にパラダイムシフトを起こし、社会課題を一気に解決できるかもしれない、そうした立場にあります。しかし、それを実現するにはJA全農グループだけでは無理、JAグループだけでも無理。大企業からベンチャー企業にいたるまで、多くの人たちの協力を得てはじめて実現されるものだからです。大きな夢ですが、それに向かって突き進むためにも、グループ外にたくさんの仲間をつくっていってほしい。これが1つ目の理由です。
そしてもうひとつは、もう少し現実的な理由ですが、「農業関係人口」を増やしていきたいからです。生産基盤を確立するためには就農人口を増やす必要があります。農村部の活性化を促すためには移住者を増やす必要があります。しかし、これは非常にハードルが高く、一朝一夕に実現できるようなものではありません。でも、農業と緩やかな関係を持つ人、農村部と緩やかな関係を持つ人、つまり「農業関係人口」が増えるだけでも、生産振興、地域活性化につながります。たとえ個々の関係は緩やかでも、それが日本各地に縦横無尽に張り巡らされていけば、生産の現場と消費の現場を強固につなぐネットワークとなっていきます。地道な取り組みかもしれませんが、実はこれこそがJA全農の職員一人ひとりが果たすべき真の役割とも言えます。同時に職員にとって、そうした人と人とのつながり、地域とのつながりを生み出していく行為が、知見を広め、見識を高め、人間力を養い、それが業務にも活かされ自らの人生の豊かさへとつながっていく。これは相互扶助、助け合いの精神を発揮しながら、地域のため、そこで暮らすみんなのために仕事ができるJA全農だから追求できる自己実現であり、JA全農で働くやりがい、楽しさなのではないかと、私はそのように思っています。

代表理事 理事長

野口 栄Sakae Noguchi

1981年入会、早稲田大学理工学部卒。農業技術センター自動車燃料研究部で検査や講習を担当して以降、一貫して生活関連事業に従事。燃料部次長、同部長、常務理事を歴任し、2019年に代表理事専務、2021年に代表理事理事長に就任。10数年前に実家のある茨城に戻り、JAの正組合員として、水田は委託しつつも畑仕事は可能な限り自ら行っている。檀家や氏子の総代なども務め、農業を生活の一部に取り入れたこれからの多様な働き方を実践中。

※使用画像については、みのりみのるプロジェクト「AGRIFUTURE」より一部転載しています。

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